Director's Message
また会いに来たいと思える場所に。
それが、私の願いです。
話し終えた人が、少しだけやわらかい表情で帰っていく。
この仕事をしていて、一番うれしい瞬間です。問題が解決したわけでも、明日から何かが変わるわけでもありません。それでも「ここなら、また来てもいいかもしれない」——そう思ってもらえたなら、昨日まで閉じていた扉が、ほんの少し開いた証だと思っています。
私がカウンセリングで何より大切にしているのは、まず聞くことです。さえぎらず、急かさず、「それは違う」とも言わず。あなたが言葉を探している沈黙の時間も、そのまま一緒に待ちます。必要なときには一緒に方法を考えますが、その前に、まずは安心して話せること。そこから始めたいと思っています。
本気で向き合うほど、
そっと伝えたほうがいいこともある。
「今は少し、立ち止まってみてもいいのかもしれませんね」。あなたが気づいていない一面を、やわらかくお返しすることもあります。耳に心地いい言葉だけでは、本当に前へ進むお手伝いにはならないから。何かを伝えるときは、突き放すためではなく、あなたのこれからを信じているからこそ、です。
なぜここまで、と思われるかもしれません。私自身が、外に出られなくなった時期を生きてきたからです。あの頃ほしかったのは、正しい助言ではなく、ただ隣にいて待っていてくれる人でした。
私は、部屋で待っているだけの支援者ではありません。
あなたが外に出るその一歩に、隣でついていきます。
話を聞くだけなら、たくさんの場所があります。でも、いざ外に出ようとするその瞬間、玄関の前で足がすくむあの感覚を、私は知っています。だから私は、部屋の中で言葉をかけるだけでは終わりません。あなたが望むなら、家まで伺います。一緒に玄関を出ます。病院にも、学校にも、隣で歩いていきます。かつて私自身が、その一歩を一人では踏み出せなかったから。
「また失敗するかもしれない」と思いながら、それでもこのページを開いてくれたあなたへ。何も準備しなくて大丈夫です。うまく話せなくてもかまいません。あなたのその一歩の隣に、私がいます。
一般社団法人 こころケアセンター 代表理事
伊藤 径